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ジャイアントは1972年10月、台湾の実業家である劉金標(英語通称:キング・リュー ※以下、キング)によって創業されました。 当時アメリカは空前の自転車ブームを迎えており、キングは台湾がその生産拠点となっていることに着目。自転車製造という新しいビジネスに可能性を見いだしました。38歳のキングは台湾中部の台中で38名の社員と共に、工場敷地面積1700坪の「巨大機械工業」を設立しました。ちなみに「巨大」という社名は、当時世界大会で優勝した台南の少年野球チームにあやかったものでした。
キングは、自転車製造に取り組むうちに、創業前にはそれほど興味のなかった自転車という存在そのものに魅了されていきました。そして同時に、自社だけでは自転車全体の品質を向上させることは不可能であることに気付きました。「当時の台湾には、自転車を作るための機械はおろか、その基軸となる工業規格すら無かったのです。たとえば、タイヤとリムの寸法や公差範囲は大手メーカーがそれぞれ独自に決めていたため、タイヤとリムの相性が悪く、空気を抜くだけでタイヤが外れてしまうこともありました。こうした状況を改善することが、当初の私に課せられた使命だったのです」
こうして規格統一を目指しパーツメーカーを東奔西走していた1973年、キングは、国内の大手商社に勤務していた羅祥安(英語通称:トニー・ロー ※以下、トニー)と出会いました。二人はモノ作りに対する姿勢が一致し意気投合。トニーは「技術と品質に徹底的こだわるというキングに共感した。そして、なによりもやりがいのある仕事だ」と、入社を決断。職人気質で生産を指揮するキング、英語堪能で営業や広報を司るトニー。近年まで続くツートップ体勢が、この時に構築されました。
トニーの加入によってビジネスの成長が加速し、1979年には年間生産台数35万台というアジア屈指の規模に到達。さらに1981年、OEM依存からの脱却を目指し、自社独自のブランドとして「GIANT」を立ち上げます。その5年後の1986年には、初の海外拠点としてオランダ(ジャイアントヨーロッパ)に進出。翌1987年にアメリカ、そして1989年にジャイアントジャパン(株式会社ジャイアント)を設立。世界中にネットワークを拡大していきました。
マウンテンバイク(※以下MTB)全盛期の1990年代、MTBトップアスリートの活躍によって、ジャイアントの名前は多くのライダーに知られるようになります。1995年には伝説的MTBライダー、ジョン・トマックとの契約が大きな話題になり、翌1996年には契約ライダーのルーン・ホイダルがMTBワールドカップで年間5勝を獲得。隆盛を極めたMTB界の拡大とともに、ジャイアントはレースシーンでの存在感を確固たるものにしていきました。
そして1998年、スペインの名門ロードチームである「オンセ」と契約し、ツール・ド・フランスに出場。MTBを足がかりにロードバイクでも世界の頂点に躍進し、名実ともにトップブランドの一角に加わることとなったのです。
2000年代前半の自転車業界は、世界最高峰のレースで培われる技術とイメージをもって製品を売り込もうとする、いわゆるトップダウン型のマーケティングが主流であり、これに疑問を挟むメーカーはありませんでした。しかし、自転車を生涯の友と敬愛するキングは、自転車は単なるスポーツ機材ではなく、もっと広く大きく、人の暮らしそのものをより良くしてくれるパートナーであると提唱し、「RIDE LIFE」すなわち「健康的で環境にも配慮した、自転車と共にあるライフスタイル」という理念を広めるべく、自ら世界で走り始めたのです。
2007年、73歳だったキングは、総走行距離927kmにおよぶ台湾一周サイクリング(=環島/ファンダオ)を完遂。この「環島」は、現在「FORMOSA900」として台湾の国家的イベントにまで成長し、国内外のサイクリストに親しまれています。 しかし2007年の当時は「元選手ではない72歳が927km」という年齢/距離の相関性は自転車業界内であっても破格であり、台湾国内のサイクリングブームの起爆剤となったばかりでなく、欧米や日本のサイクリストにも大きな刺激を与えました。
さらに2008年、女性による女性のためのサイクルブランド「Liv/giant(現在のLiv)」を創設。キングの姪である杜綉珍(英語通称:ボニー・ツー)(当時副社長、現CEO)を牽引役とする社内女性チームを立ち上げ、それまで男性主導だった開発現場に真の女性目線を注入。女性にとっての「RIDE LIFE」をイチから構築し、サイクリングをもっと身近に、もっと魅力的にするべく、女性専用設計のバイクやギア、そして女性にとって居心地のよいLivストアまで、全世界に拡大させ続けています。
環島後のキングは、ヨーロッパ、中国、日本と、海外でロングライドに挑戦。現地のサイクリストとの交流はもちろん、自転車インフラやスポーツサイクル文化の発展について現地の政治家や行政担当者らと議論を交わし、サイクリング文化拡大に貢献し続けました。そして80歳となった2014年、再び台湾一周を完遂。しかも7年前の初挑戦より短い日数で走りきり、年齢を重ねてもなお成長できる自転車の素晴らしさを国内外に知らしめました。
2016年末、キング、トニーともにジャイアントのトップから退きましたが、現在も自らが提唱した「自転車新文化」の象徴として、様々な分野への働きかけを継続しています。
私たちジャイアントは、創業者キング・リューの理念を受け継ぎ、「RIDE LIFE」の実現とサイクリング文化の発展に邁進してまいります。
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